心理測定法-キーワード
演繹的研究
物事を考える際、最初の前提から次の前提を導き、それを繰り返して最終的に必然的な結論を導く方法。
例「もし、~ならば~が起きる」と予測される。仮説を基に実験をする。
帰納的研究
実験結果からそれはどうしてなのか実験をする。
実験データから仮説を立てて一般化していく。
例「もし~ならば何が起きるだろうか」
単一事例研究
一人の人間を被験者として行われる実験デザイン。臨床や教育など、多くの被験者を集めにくい領域での研究や、個人内の変化に着目する研究で、広く用いられる。
変数
独立変数(説明変数)
心理学実験に置いて、実験者が操作する値
従属変数(基準変数)
実験において測定される値
絶対閾
刺激閾ともいう。感覚を知覚する最小の刺激
刺激頂
感覚を知覚することができる最大の刺激
弁別閾
丁度可知差異ともいう。2つの刺激量の違いが分かるか否かの境目
測定尺度(水準)
【名義尺度】
事像の分類のために各カテゴリーに与えられた数値による尺度。名義尺度は、数値の大きさや順序に意味はなく、カテゴリーの識別だけを行う尺度なので、相互に値を入れ替えてもかまわない。
【順序尺度】
相対的な順序関係を表す数値による尺度。
数値の大小関係のみが意味を持ち、その差は意味をもたないので、尺度に単純な変換を施してもさしつかえない。
【間隔尺度】
数値の差(間隔)が意味をもっている尺度。いいかえると、任意の原点と等間隔な単位をもつ尺度である。
【比率尺度】
絶対的な原点と等間隔な単位をもった尺度。長さ・重さ・時間などの物理量はこれにあたる。
恒常誤差
【空間誤差】
標準刺激と比較刺激を提示するときの位置関係の違い
【時間誤差】
提示順序の違い
【系列誤差】
あきらかに大きな刺激を小さくしていく系列(下降系列)と、逆に必ず小さいと判断される比較刺激から調整を始める系列(上昇系列)を半分ずつ用いる。
精神物理学的測定法
【調整法】
被検者または実験者が刺激を自由に変化させながらPSEなどを求める方法。
例:(ステレオのボリューム調整)
【極限法】
刺激を一定ステップで一定の方向に変化させながら各ステップごとに判断を求める方法。
例:(純音聴力検査・視力検査)
【恒常法】
数段階に変化する刺激をランダムに提示し、ある刺激に対してある反応が出現する確率50%になる点を推定する。
例:(周辺の道を走っている車の色を見る)
【適応法】
被検者の判断に応じて提示する刺激の条件を変化させる。
例:(UD法・PEST法)
【信号検出理論(TSD)】
感覚過程と決定過程を分離して人の弁別力を表す。何らかの意味での信号(反応)が雑音の中から検出されなければならないとする(例えば、かすかな光点を画面上で検出する)すると、次の4種類の場合が測定される。
①ヒット:信号の存在を正しく認知する)
②コレクト・リジェクション:信号の不存在を正しく認知する。
③ミス:信号の存在を見落とす。
④フォールス・アラーム:信号がないにも関わらず信号の存在を報告する。
これらの4つの可能性を考慮し、真の信号(反応)を統計的に測定するもの。
例:(記憶の再認課題の成績の評価)
代表値
【平均値】
数値の中心の位置を表す統計量をいう。
【中央値】
メディアンや中位数ともいわれ、測定値を大きさの順に並べたときに、ちょうど中央に位置する値のことである。
【最頻値】
モードともいう。もっとも度数の高い測定値のことである。
分散
「ばらつき」をいう
標準偏値(SD)
データの分布度の広がり幅(ばらつき)をみる1つの尺度である。
正規分布
ある標本集団のばらつきが、その平均値を境として前後同じ程度にばらついている状態。度数分布表を書くと、平均値を線対称軸とした釣鐘状になる。
標準化
教示・時間・問題の提示方法などテストの実施方法、テストの項目、採点方法、判定基準などテストに関わる一連の事柄を規格化する手続きを標準化という。
有意水準
統計では、ある事柄が偶然発生する確率(有意確立)を求めてそれが偶然起こったのか、何らかの必然なのかを結論つける。その時の偶然・必然の境目を決める。その値を有意水準という。
帰無仮説
「差はない」ことをいう
パラメトリック・ノンパラメトリック検定
パラメトリック検定:母集団が正規分布していることを前提とした検定方法(量的変数)
ノンパラメトリック検定:母集団に特定の分布を仮定しない検定方法(質的変数)
t検定
間隔・比率尺度間の関係を調べる。平均値の差。
X²検定
名義尺度で測定されたデータの度数や比率の差を群間や条件間で比較する場合に使う。クロス集計の度数分布の分析方法のひとつ。基本はt検定と似ている。
F検定
各標本群が別々の母集団から抽出されたとき、等分散であるかを検定する。間隔・比率尺度間の関係を調べるための検定。
U検定
2つの群に属する対象(データ)を混ぜて順位をつけた時に、2つの群の間に順位の偏り(差)があるかどうかを検討するノンパラメトリックな検定の1つである。順序尺度のデータに適用できる。
尺度構成法
測定の結果として、測定対象を何らかの尺度上に位置づけることは重要である。これを尺度構成という。
尺度構成法=直接法と間接法
直接法:比率尺度や間隔尺度で直接判断を求める方法。ME法(マグニチュード推定法)とMP法の2つに分けられる。
ME法:標準刺激と比較して比較刺激に数値を割り当てる方法。
MP法:逆に所定の数値を決め、それに合うように刺激を調整する方法。
間接法:順序尺度や名義尺度での判断を求めた後、一定の仮定によって間隔尺度などに変換する方法。
順序尺度(名義尺度)上の測定値を一定の仮定の下で間隔尺度として扱う。
一次元の属性について測定するもの:評定法、順位法、一対比較法など
多次元の属性について測定するもの:SD法、多次元尺度構成法など
【参考文献】
著: 市川 伸一「心理測定法への招待」
監: 廣瀬肇「言語聴覚士テキスト 第2版」,2012年