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​精神医学-キーワード

心因性

心理的要因(心的ストレス)によって生じる精神障害。神経症、心因反応、心身症、生理的障害が該当する。

  

内因性

現時点で明らかな病因が解明されていない。代表的疾患は、統合失調症、気分障害、真性てんかん、非定型精神障害があげられる。

 

外因性

器質性精神障害(脳腫瘍・頭部外傷など脳そのものの器質的な病変によって生じる精神障害)、症状性精神障害(脳以外の身体疾患のために二次的に脳が障害されて生じる精神障害)、中毒性精神障害(薬物など中毒物質によって生じる精神障害)がある。

 

診断基準

病因を考慮せず、症状と経過から操作的に分類する。

①ICD-10

国際疾病分類第10版 世界保健機構(WHO)が作成

 

②DSM-Ⅳ

精神障害の診断と統計のための手引き第4版 アメリカ精神医学会(APA)作成。多軸診断、多軸評定の導入

第1軸:臨床疾患を規定

第2軸:人格障害と精神遅滞を規定

第3軸:身体疾患を規定

第4軸:精神障害の既往を規定

第5軸:心理社会的機能の全体的レベルを評定

 

意志・欲望の障害

①欲動減退

意欲減退

発動性が減弱し自発性が低下した状態。進行すると無為(発動性欠乏)となる。

  

制止

抑うつ感情のために意志の発動が抑制されて遅くなり、決断できなくなる状態。うつ病にみられる。

  

途絶

行動が急に停止し、再びもとに戻る状態。統合失調症でみられる。

  

昏迷

意識清明なのに感情表出や行動など意志発動が全く行われなくなった状態。

 

②欲動亢進

躁病や統合失調症の緊張病症状でみられる。精神運動興奮を引き起こす。

 

行為心迫

食欲と性欲の亢進、多弁、多動などが起こる。じっとしていられないために、次々と行為を行う状態。

 

感情の障害

①気分の異常

抑うつ気分

悲観的で憂うつな気分である。うつ病やうつ状態の中核症状。

  

爽快気分

高揚し、楽しさと活気に満ちた気分である。躁病や躁状態でみられる。

 

②気分の持続性の異常

 

易刺激性

些細なことで不機嫌になったり、激怒したりするもの。躁状態、統合失調症などでみられる。

 

③感情の興奮性の異常

感情鈍麻

外界からの刺激に対して喜怒哀楽、痛み、寒さ、暑さなどの身体的苦痛が減弱した状態。統合失調症でみられる。

 

思考の障害

思路(思考過程)の障害、体験様式の障害、思考内容の障害に分類される。

①思路の障害

 

観念奔逸

思考の回転がよくなり、色々な考えがわき出す。躁状態、酩酊状態でみられる。

 

思考静止

観念が思うように浮かばず、思考が渋滞するもの。うつ状態でみられる。

 

思考途絶

思考の進行が急に中断し、停止するもの。統合失調症でみられる。

 

②思考の体験様式の障害

強迫観念

不合理であると十分理解しつつも、自己の意思と関わりなく頭に繰り返し浮かぶ観念。しばしば強迫行為(儀式的行為を常同的に実際に行ってしまう)を伴う。

 

③思考内容の障害

理解不能な一次妄想

  

妄想気分

何となく悪いことが起きそうである。

  

妄想着想

原因や動機なしに突然頭に浮かんだことが意味をもってきてそのまま確信されるもの。突然自分は神様であるとわかった。

  

妄想知覚

実在する対象の知覚に突然了解不能な意味づけをし、それを確信するもの。あの人が帽子を触ったのは私を嫌いであるからである。

被害妄想

自分が特定の他人や組織から害を加えられている。

  

微小妄想

自己の能力、地位、財産などに対して過小評価する。

  

関係妄想

自分に関係ない周囲の人たちの態度や話し声などを自分に関係づけて悪口を言われていると思う。

 

妄想の内容によって被害的な内容の妄想、微小的内容の妄想、誇大的内容の妄想に分類される。

 

知覚の障害

幻覚

実在しないものを知覚すること。幻視、幻聴、幻嗅、幻触、幻味、体感幻覚などに分類される。

 

幻視

閃光、人の顔、情景がみえたりする。アルコール依存症の振戦せん妄、意識障害時に出現。

 

幻聴

物音、人の声、音楽が聞こえたりする。統合失調症で出現

 

幻嗅

てんかんに出現しやすい

 

幻触

体の表面を虫がはっているような気がする。

 

体感幻覚

脳が腐っている、頭の中が空っぽになった。

 

自我意識の障害

離人症(離人体験)

自分が存在しているとの意識が薄れ、現実感が乏しくなり、生き生きと感じられない。神経症、統合失調症、うつ病に多く出現。

 

させられ体験

自分のやっていることが他人から干渉されていると感じる。

 

自分の考えていることが奪われる(思考奪取)、考えを無理やり入れられる(思考吹入)などがある。統合失調症に特異的な症状。

 

意識の障害

意識混濁

意識の清明度が障害され、脳の活動水準が低下した状態。

 

せん妄

軽度~中等度の意識混濁を基盤として、不安、錯覚、幻覚、精神運動興奮などが加わった状態。

 

知能の障害

知能は流動性と結晶性知能に分類される。

 

流動性知能

スピードおよび正確さと関連。20歳代前半をピークに低下する。

 

結晶性知能

社会的知識やスキルなど生涯を通して経験の積み重ねにより獲得される。かなりの高齢まで伸び続ける。

 

知能障害を起こす病気:認知症

 

記憶の障害

即時記憶、近時記憶、遠隔記憶に分類される。

 

記銘力障害

新しい経験を覚えることができない。意識障害や注意障害があるときに生じやすい。

 

健忘

ある一定期間、一定の事柄に対する追想できないもの。全健忘、部分健忘、逆行性健忘、前行性健忘などがある。

 

性格の障害

人格障害

人格あるいは性格が平均的水準に比較して、著名な偏りを示し、そのため自分が悩んだり、社会生活上の問題を引き起こす。

 

主な人格障害

妄想性人格障害、統合失調質人格障害、非社会性人格障害、情緒不安定性人格障害、演技性人格障害、強迫性人格障害、不安性人格障害、依存性人格障害、自己愛性人格障害

 

統合失調症(型)

以前は精神分裂病と呼ばれていた。生涯持続する慢性精神病。有病率:0.7~1%発症年齢:青年期の発症(思春期から30歳までの発症が全体の8割)病因:遺伝要因、体型・病前性格要因・脳の形態的要因、精神生理学的要因、神経化学的要因、心理学的要因、発達要因、社会的要因、非疾患説など多岐にわたる。病型:破瓜型、緊張型、妄想型の3型に分類。

 

破瓜型

20歳前後に発病し、最大の特徴は自閉傾向。徐々に陰性症状が目立ち、人格水準が落ちて荒廃していく。3型の中で最も重度。

 

緊張型

20歳前後に発病。主要症状は精神運動障害(緊張病性昏迷・興奮)である。

 

妄想型

30歳前後に発病。妄想が目立ち、人格の崩れが少ない。

 

統合失調症陽性症状

思考の障害:①幻覚

体感幻覚、幻聴(幻声)が多い。幻聴による独語(ぶつぶつ独り言をいう)や空笑(突然笑い出す)。

 

②妄想

被害妄想、関係妄想、誇大妄想、血統妄想、宗教妄想、恋愛妄想、心気妄想がある。理解不能な一次妄想(妄想気分・妄想着想・妄想知覚)が多い。

 

思路の障害

連合弛緩→支離滅裂→言葉のサラダ・言語新作の順に重篤、思考の途絶

 

自我の障害

離人症状、させられ体験(思考吹入・思考化声・思考奪取・思考伝播・思考干渉・思考察知)

 

緊張病症状

興奮、昏迷、緘黙、拒絶症、常同症、カタプレシー(蝋屈症)、反響症状、衒奇症、奇矯、表情の障害(しかめ顔、ひそめ眉、とがり口)

 

 

統合失調症陰性症状

意欲の低下、意欲の欠如、感情鈍麻(情意鈍麻)、感情の平板化、自閉

 

躁鬱病(双極性障害)

初発年齢:20歳代が最も多い(うつ病よりも好発年齢が低い)

有病率:0.5% 男女差はない

躁状態のみの人いずれはうつ状態が出現する。

治療:薬物治療(気分安定薬)、精神療法

 

躁鬱病の症状

気分・感情の障害:気分の高揚、爽快気分、楽天的、自己評価が高い、易刺激性(些細なことに激怒、感情の起伏が激しい、攻撃的)

意欲の障害:行為心迫(多弁、多動など)、精神運動興奮

思考の障害:観念奔逸、誇大妄想

身体症状:睡眠障害(不眠であっても苦でない)、食欲・性欲亢進

その他:病識欠如、著しい迷惑行為をなす

 

神経症

不安、抑うつ、心気、離人などの主観的な症状を慢性的に訴える状態であり、生活・職業・社会における種々の不適応を惹起する。

好発年齢:思春期~青年期

 

治療:薬物療法(抗うつ薬・抗不安薬)、認知行動療法がある。

病態:恐怖症、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、解離性(転換性)障害、身体表現性障害、離人神経症、神経衰弱症など。

 

①恐怖症

閉所、広場、高所、不潔、先端、動物、疾病など様々な対象に異常な恐怖・嫌悪を示す。恐怖とは特定の対象に対する場合を指す。

 

②全般性不安障害

漠然とした不安が全般的かつ持続的である。不安とは対象をもたない漠然としたもの。

 

③パニック障害

過呼吸、動悸、頻脈、下痢など身体の生理的変化がみられ、死の恐怖を伴う。パニック発作は長時間続かず、特定の場所で生じるタイプと場所を問わないタイプとに分けられる。

 

④強迫性障害

強迫観念、強迫行為を生じる。発症は小児期か成人早期。男女同頻度。経過は、難治性で慢性化することが多い。

 

身体表現性障害

疼痛症状、胃腸症状、性的症状あるいは非神経学的症状など様々な身体症状を示す。女性に多く、発症のピークは成人初期である。疼痛性障害、身体醜形障害、心気症なども含まれる。

解離性障害

DSM-Ⅳでは2つに分類されている。

①解決困難な心の葛藤を無意識に抑圧したために人格の統合が失われ意識障害、同一性障害などの精神症状が出現する。

②運動、感覚の障害などの身体症状に転換されて出現する身体表現性障害の中の転換性障害のこと。

 ICD-10では区別されていない。

 

アルコール

アルコール精神障害は急性中毒、慢性中毒に分けられていたが、慢性中毒については近年自己統制力の喪失という観点からアルコール依存と呼ぶようになった。診断基準は「アルコールの使用が、以前にはより大きな価値を持っていた他の行動により、はるかに優先するようになる一群の生理的・行動的・認知的現象・依存症候群の中心はアルコールを使用したいという欲望である」

 

薬物依存

依存性の薬物には麻薬及び向精神薬取締法やあへん法の対象となる麻薬類(モルヒネ、コカイン、ヘロイン、LSDなど)、大麻取締法の対象となる大麻類(マリワナ、ハッシシ)、覚醒剤取締法の対象となる覚醒剤(アンフェタミン、メタンフェタミンなど)、毒物及び劇物取締法の対象となる有機溶媒(シンナーの主成分であるトルエンなど)、睡眠薬(バルビタール、ベンゾジアゼピン系など)や精神安定剤が挙げられる。

 

認知症

認知症とは正常に発達した知能が何らかの脳障害により低下し、日常の家庭生活や社会生活が困難になった状態のことをいう。知能が低下すると認知機能全般が低下し、記憶障害や見当識の主外が前面に現れ、さらに人格の変化を伴ってくる。

【参考文献】

著:北川 定謙 (監修), 上野 修一 (編集), 谷岡 哲也 (編集), 大蔵 雅夫 (編集), 北村 諭 「精神医学 (コメディカルのための専門基礎分野テキスト)」

監: 廣瀬肇「言語聴覚士テキスト 第2版」,2012年

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