形成外科-キーワード
鰐弓について
胎生4週に出来る。鰐弓の数は6対出来るが、5,6対目は痕跡的である。
・第一鰐弓:下顎弓-三叉神経
・第二鰐弓:舌骨弓-顔面神経
・第三鰐弓-舌咽神経
創傷の一期癒合と二期癒合
一期癒合
一次治癒とも言う。癒合やテーピングにより創縁を寄せて、ギャップを最小限にした状態での治癒。短期間に治癒。生じる瘢痕も少ない。
二期癒合
二期治癒ともいう。創縁が離開した状態での治癒。治癒期間が長い。生じる瘢痕も多い。
多分化能幹細胞
ヒトでは表皮と毛包脂腺系に分化できる多分化能幹細胞が毛球直上付近に存在し、皮膚表層が欠損するとこの幹細胞が分裂・遊走して表皮基底細胞へと分化し、表面に遊走して創表面を被覆すると考えられる。毛包を欠く掌蹠では汗腺にこのような幹細胞が存在すると考えられている。
創傷治癒に関与する細胞4つと因子3つと創傷治癒の阻害因子
4つの細胞
・炎症細胞・・・好中球,マクロファージ
・繊維芽細胞
・表皮細胞
・血管内皮細胞
3つの因子
・サイトカイン:細胞のレセプターに結合する代表的なもの。固有の細胞反応が生じる。
・インテグリン:細胞表面にあって触角のような役割
・ホルモン:成長ホルモン・・・治癒を促進 ※副腎皮質ホルモン・・・治癒を阻害(ECMの産生を阻害)
肥厚性瘢痕
外傷後に、創面を修復しようと出来た線維組織が過剰に産生され、いわゆるミミズバレ状の瘢痕が長期にわたり残存する状態をさす。
ケロイド
一般の人においては、傷跡にならない程度の真皮への損傷が原因で、いつまでも周囲の健常皮膚へ腫瘍的増殖によって増大傾向を示す。繊維性皮膚腫瘤
遊離植皮術
1.移植床からの血行再開で生着する
2.皮膚のみしか生着しない
3.弾力性,伸展性に乏しい
4.色素沈着を生じやすい
5.骨,腱,軟骨に血行がないため移植できない
6.移植後の圧迫固定が必要
7.伸展運動部位では生着後の再拘縮が生じやすい
有茎弁植皮術
1.皮弁の茎からの血行で生着する
2.皮膚だけでなく皮下脂肪,筋肉,骨なども同時に移植できる
3.弾力性,伸展性に富む
4.色素沈着を生じにくい
5.血行の悪い部位にも移植できる
6.移植後の圧迫固定は不要
7.伸展運動部位では生着後の再拘縮が生じにくい
遊離皮弁
マイクロサージャリーを応用して、皮弁採取部(donor site)と移植部(recipient site)のそれぞれの動静脈吻合を行うことにより、組織を離れた病巣部に移植するものをいう。
自家移植・同種移植・異種移植
自家移植:患者自身の組織を移植すること
同種移植:他人の組織を移植すること
異種移植:人以外の他の動物種の組織を移植すること
全層植皮:表皮+真皮の全部
・生着しにくい。
・硬化,収縮,色素沈着しにくい。
・採皮部の閉鎖-手術的に閉鎖する必要あり。
分層植皮:表皮+真皮の一部
・生着しやすい。
・硬化,収縮,色素沈着しやすい。
・採皮部の閉鎖-自然の上皮化に任せられる。
皮弁
皮膚及び皮膚を含めた複合組織の移植法の1つ。周囲組織と連続を保っている残された茎を通して、栄養血行が司られる。
<皮弁の分類>
・移動法による分類
局所皮弁:皮弁作成部位を欠損部位周囲に求める皮弁
区域皮弁:主要動静脈を含む皮弁を移植近隣部に求める皮弁
遠隔皮弁:皮弁作成部位を欠損のある移植部より遠隔部とするもの。
遊離皮弁:マイクロサージャリーを応用して皮弁採取部と移植部のそれぞれの動静脈吻合を行うことにより、組織を離れた病巣部に移植するものを言う。
口唇裂形成術の種類
・四角弁法(Le Mesurier法)
患側口唇に四角弁を作成し、健側口唇へ挿入する方法
欠点:組織の切除量が多い。横方向の瘢痕が目立つ。
・三角弁法
患側に三角弁を形成し、計測の概念を導入し、健側唇に挿入する方法
利点:計測により正確なデザインを行うことが出来る。組織の切除量が少なく、術後の再修正も容易である。
欠点:三角弁が大きいと、患側唇が下垂しやすい。
・直線法(弓状切開法、中島法)
鼻翼基部から患側歯槽骨にかけて存在する皮膚を四角弁として、健側内脚隆起方向へ移動する方法。外鼻形成も同時に行う。
利点:縫合線が人中稜に沿い、直線に近い縫合線にできる。
欠点:デザインに熟練を有する。
・Millard法=rotation-advancement法(R-A法)
Z形成術の応用により、健側の白唇を下におろし、患側からの組織を伸ばして挿入する方法
利点:あまり厳密な計測を行わなくても安定した結果が得られる。→現在多くの施設で行われている。
欠点:患側キューピット弓の頂点が吊り上ることがある。
・R-A法+小三角弁法(鬼塚法)Millard法の変法
ミラード法で、赤唇の上に小三角弁をつけ加える改良法
利点:患側キューピッド弓の頂上の吊り上がりを防ぐことができる。
口蓋裂形成術の種類
・ランゲンベック法(Von Langenbeck法)
骨膜粘膜弁とする方法(口蓋延長は行わない)言語成績が劣る。上顎骨発育障害をきたす。
・プッシュバック法(Push back法)=ウォーディル法(Wardill-Kilner法)
骨膜粘膜弁とするが、口蓋帆挙筋を縫合して口蓋延長を行う方法。言語成績は向上。上顎発育障害をきたす。
・ペルコ法(Perko法)
上顎骨の成長障害を少なくするために(プッシュバック法で硬口蓋に作製する皮弁を)粘膜弁とする方法(顎発育を考慮した手術法)
・ファーラー法(Furlow法)
口腔側と鼻腔側に逆向のZ形成術を行い、口蓋帆挙筋の筋束再建、軟口蓋を後方に延長する方法(顎発育を考慮した手術法)言語・顎発育両面に良好な結果が得られる。
口唇裂形成術と口蓋裂形成術の手術時期
口唇裂手術時期:生後3ヶ月、体重6kgになった時
口蓋裂手術時期:生後1歳~1歳半頃(一次手術)
Abb法〔下口唇反転皮弁法〕
下口唇の組織を下口唇動脈を茎とする皮弁として上口唇に移動し、4~7日目に皮弁の茎を切断する手術法
咽頭弁手術
咽頭後壁より粘膜弁を挙上し、軟口蓋上面に逢着し、咽頭腔を機械的に狭くして開鼻声を改善する。二段階法の2次手術である。
※二段階法
手術による上顎の成長障害を軽減するために、口蓋裂の手術を2回に分ける方法。
①生後1歳頃までに軟口蓋裂閉鎖のみ行い、硬口蓋裂は口蓋閉鎖床を装着する。
②5~6歳で硬口蓋の閉鎖を行う。
<欠点>
・2回の手術が必要
・鼻咽腔閉鎖機能の獲得時期が遅れる。
Crouzon症候群
・頭蓋骨縫合早期癒合
・中顔面発育不全
・眼球突出
Aperrt症候群
・頭蓋骨縫合早期癒合
・中顔面発育不全
・合指(趾)
Treacher-Collins症候群
第一鰐弓の上顎隆起の形成不全によるもの。
①垂れ目
②下眼瞼の部分欠損
③頬・下顎の低形成
Pierre Robin症候群
・先天性小額症。口蓋裂を合併することが多い。
<症状>
・舌根沈下、吸気性呼吸障害、栄養障害
<治療>
・呼吸管理
・気管内挿管、気管切開(チアノーゼを繰り返す場合)
・舌下口唇癒合術(長期に渡る場合)
顔面骨骨折の部位別頻度
1位:鼻骨 2位:頬骨 3位:下顎骨
【参考文献】
監: 波利井清紀「TEXT 形成外科科学第2版」